Ophir Photonicsのパワーおよびエネルギーセンサーは、連続光(CW)およびパルス光を問わず、さまざまな波長、出力、ビームサイズのレーザー測定に対応しています。本稿では、レーザー照射によって発生する熱を利用してレーザーパワーを測定する2種類のセンサー、すなわちカロリーメーターとサーマルセンサーについて解説します。
カロリーメーターレーザーパワーセンサーの動作原理
カロリーメータは、化学反応や物質の物理変化によって生じる熱量を測定する「熱量測定(calorimetry)」の原理に基づいて動作します。
calorimetryという用語は、ラテン語の「calor(熱)」とギリシャ語の「metron(測定)」に由来しています。
本方式では、レーザー光がセンサーに吸収され、熱エネルギーへと変換されます。その結果生じる温度上昇を測定することで、入射レーザーの光パワーを算出します。
サーマルレーザーパワーセンサーの動作原理
短時間(数十秒以内)の測定において、カロリーメータの基本式は以下で表されます:
Q = mCvΔT
・Q:レーザーから測定装置へ伝達された熱量
・m:加熱される物体の質量
・Cv:比熱容量(単位質量の温度を1℃上昇させるのに必要な熱量)
・ΔT:温度変化
Ophirのポータブルセンサ―シリーズ「Comet」は、この原理を採用しており、アクティブ冷却を必要とせずに動作します。
連続的な測定では、発生した熱を外部へ放散する必要があります。高出力領域では、通常、水を用いた閉ループ式チラーによる冷却が用いられます。
冷却媒体の流量および温度上昇を高精度に測定することで、以下の式によりレーザーパワーを求めることができます:
P = qvCvΔT
・P:レーザーパワー
・qv:冷却媒体の流量
・Cv:冷却媒体の比熱容量
測定方式および用途の違い
次に、サーマルセンサーの動作について説明します。
図1に示すように、レーザービームはセンサ―中心部に照射され、吸収されて熱エネルギーに変換されます。センサ周縁部はヒートシンク(空冷または水冷)と接続されており、中心から外周へ向かって放射状に熱が流れ、温度勾配(中心が高温、周辺が低温)が形成されます。この温度勾配はレーザーパワーにのみ依存するため、パワー測定に利用することが可能です。
この測定は、センサーディスク上に配置されたサーモパイルにより行われます。サーモパイルはゼーベック効果を利用して、温度差に比例した電圧を発生させます。サーモパイルの配置により、ビーム径や位置に依存しない測定が実現されています。

本設計は、空冷または水冷により約5kWまでのパワーに対応可能です。これを超えるパワー領域では、ゴールドコーティングされたリフレクタ―を用いてビームを拡大し、吸収されるパワー密度を低減します。このアプローチにより、最大30kWまでスケーラブルに対応可能です。30kWを超える領域では、実用上の制約によりさらなる拡張が困難となります。図2は、最大30 kWのレーザーパワーを測定可能な、Ophirの最大規模のサーマルセンサーを示しています。

カロリーメーターとサーマル(サーモパイル)センサーの主な共通点と相違点
両測定方式の利点について整理しましょう。
サーマルパワーセンサ―は、ミリワットからキロワットまで幅広いパワーレベルを測定できるため、カロリーメーターよりも汎用性が高いです。カロリーメーターは、低出力レベルではその性能が制限されるため高精度な流量と温度測定を必要としますが、サーマルセンサーは低出力測定にも容易に対応できる。
サーマルパワーセンサーは、ディスクの放射状加熱によって測定可能な電圧信号をより速く生成するため、カロリーパワーメータ-よりも応答速度が速くなります。一方、カロリーメーターは質量が大きいため、定常状態の温度に達するまでに時間を有します。近年の技術革新によりカロリーメーターの応答速度は向上しているものの、30kWを超えるレーザー用の高出力センサーの応答時間は依然として数十秒オーダーとなります。
さらに、サーマルセンサーは、一般的によりシンプルな冷却システムで済みます。低出力レベルでは、自然冷却やファンのみで済むため、設置が容易です。高出力レベルでは冷却水が必要になりますが、安定した冷却水の流れと精密な温度制御によって精度を確保する必要のあるカロリーメーターよりも管理が容易です。
カロリーメーターとサーマルセンサーの選定
前述の点から比較すると、サーマルセンサーの方が便利な選択肢のように思えるかもしれませんが、カロリーパワーメーターには独自の利点があります。サーマルパワーセンサーは第一原理に基づいているため、光パワーの測定においてより直接的で、潜在的に高い精度を実現できます。さらに、様々なパワーレベルにおいて非常に直線的な応答を示します。加えて、カロリーパワーメーターでは吸収体を直接冷却するため、サーマルセンサーに比べてはるかに高いパワーレベルに対応しています。実際、30kWを超えるパワーレベルでは、ほとんどのセンサーがカロリー測定の原理に基づいて設計されています。
要約すると、主な要件が高出力レベルの測定、または30kWを超える数キロワット級のビームを扱う場合、カロリーパワーメーターが理想的な選択肢となります。一方、よりシンプルな構成を好み、より広い出力範囲の測定が必要な場合は、サーマルセンサーの方が実用的なソリューションとなるでしょう。以下の表は、両方の測定方法の主な特性をまとめたものです。
| 項目 | サーマルセンサー | カロリーメーター |
| 実用出力範囲 | mW ~ 30kW | 1kW以上 |
| ダイナミックレンジ | 2000:1 | 100:1 |
| 低出力測定 | 可能 | 制限あり |
| 応答速度 | 高速 | 低速 |
| 冷却制御要件 | 簡易(低温リザーバのみ) | 高精度な温度・流量制御が必要 |
| 30kW超測定 | 不可 | 対応可能 |



