アプリケーションノート: 長距離セキュリティ及び監視用途向けのIRズームレンズ
セキュリティおよび監視市場では、長距離赤外線(IR)イメージングが監視、追跡、標的化においてますます重要な役割を果たしています。業務用および軍民両用のセキュリティおよび監視用途向けIRシステムの世界市場は急速に成長して、2025年までに合計2億4,300万ドル([1]2019~2025年の複合年間成長率は6.1%)に達すると推定されています。
IRイメージング技術を利用して人物や車両の画像を極めて遠方からキャプチャーできる長距離IRカメラは、今日の長距離セキュリティおよび監視の課題に不可欠であります。長距離IRカメラは高性能IRレンズを搭載しているため、放射された赤外線を効果的にとらえてディテクターの素子に集光できます。
長距離セキュリティおよび監視用IRレンズ等の光学部品の生産は、以下のような最近の市場動向の影響を受けています。:
- オプティカルIRシステムの開発: 技術進歩により、センサーのピクセル数が小さくなり、カメラの解像度が向上し、高精細化が進みました。その結果、先進的で高精度なIR光学部品とレンズアッセンブリ―を備えたオプティカルIRシステムが必要とされるようになりました。
- セキュリティおよび監視用のUAVやドローンの利用拡大: UAVやドローンは、SWaP(サイズ、重量、消費電力) が厳しく制限されているため、新しい革新的な光学機械設計が必要とされています。
- マルチスペクトル機能に対する需要: SWIR+MWIR、MWIR+LWIR、VIS、NIRバンドをカバーするマルチスペクトル機能を備えたシステムに対する需要増加は、IR部品とアセンブリの新たな仕様につながっています。
- 幅広い環境条件での安定した動作: セキュリティおよび監視任務は、昼夜を問わず、雨や
霧など視界の悪い条件下で遂行されます。そのため、光学部品は耐久性があり、あらゆる環境条件においても高い性能を維持する必要があります。
課題 前述の市場動向を考慮すると、光学メーカーは、最新のセキュリティおよび監視イメージングシステムの制約と需要を満たしながら、高い性能を提供する光学部品を生産するという課題に直面しています。
この目的のために、以下の重要事項に取り組む必要があります。:
- 長距離能力を備えた検出、認識、識別(DRI)要件
- カメラのセンサー選択(非冷却LWIRまたは冷却MWIR)
- ディテクターの解像度および種類
- 焦点距離およびF#
- サイズおよび重量の制限 (特にUAVとドローンシステムに関連するSWaPの制約)
- 光学性能を実現するための変調伝達関数(MTF)
- 環境要件
これらを考慮に入れ、Ophir社は新しい革新的な設計と製造技術を採用しています。
ソリューション Ophirは、以下の方法で、長距離セキュリティや監視システムの厳しい課題に対応するIR光学系を実現しています。:
連続ズームレンズの設計
1本のズームレンズだけを利用する連続ズームレンズ設計により、複数の単一FOVレンズに比べて小型軽量化と高性能化を実現しています。オペレータは操作中に簡単に倍率を変更して、セキュリティおよび監視任務を柔軟に遂行できます。
革新的な光学設計
- 先端赤外材料により、素子数を減らすことができるため、断熱化、無色化、サイズ、重量といった課題に対応できます。
- 屈曲光学設計により、サイズと重量の削減も可能になります(図2を参照)
- 解析限界的設計により、可能な限り最高の性能が得られます。
革新的な機械設計
機械設計により過酷な環境下での耐久性を確保するとともに、以下の部品を使用することで、様々な使用状況下での高精度で安定した動作を実現します。:
- 高精度、高品質の機械部品
- 高精度で安定した研削部品およびハードコート部品
- 断熱化と低SWaP設計を確実に実現する先端材料
- 過酷な環境条件での耐久性
Ophirは、衝撃や振動に耐えられるよう、レンズアセンブリの重量と剛性を最適化しています。エンジニアは、過酷な環境条件下でメンテナンスを行わずに長寿命を実現できるように、可動部品の設計とテストを行っています。レンズアセンブリはIP67環境基準を満たしているか、それを上回っています。
高度な生産能力
社内にある最先端の部品生産能力により、用途に応じて様々な形状や材質の部品を製造できます。特に、狭視野(FOV)を得るためには、高精度で大型の光学系が不可欠であり、当社の高度なハイエンドレンズ生産能力は、この課題を解決するための大きな一翼を担っています。
高い光学性能を得るには光学コーティング も欠かせません。Ophirでは、過酷な環境下でも問題なく動作するよう、高耐久性(HD)と低反射硬質炭素 (LRHC)のARコーティングを採用して性能と堅牢性を最大限に高めています。これらのコーティングはマルチスペクトル用途にも適しています。
製品の機能
Ophirは、セキュリティおよび監視用途向けに以下の主要特性を備えた幅広い製品群を提供し、各用途で求められる要件に応えます。:
- ズーム全域で照準を維持
- ズーム全域で固定F#を維持
- ズーム全域で焦点を維持
- 低温および過酷な環境条件での動作
- 高い画質を維持
- 連続光学ズーム位置調整機能により高速FOV変更を実現
- 主要なMWIRおよびLWIRディテクターとの互換性を提供
当社の能力をご理解いただけるように、EFLが長い3種類のズームレンズを以下にご紹介します。これらの製品は、長距離セキュリティおよび監視用の最先端の機能を備えています。:
SupIR® 28-850mm f/5.5
SupIR® 28-850mm f/5.5 レンズの主な特徴:
- MWIR スペクトル範囲- 波長3μ~ 5μ
- 15μピクセルピッチの高精細ディテクターフォーマット (1280 x1024) に対応
- 30倍率のズーム比
- 屈曲デザイン
- タイトな照準保持
- きわめて長い動作範囲 (検出距離 20 km 以上、詳細は図7を参照)
図4は、本レンズのNFOVとWFOVにおけるMTFチャートを示しています。これらのチャートは、MTFのサジタル(S)成分と接線(T)成分を、WFOVとNFOVの両方の焦点面の異なるフィールド位置での空間周波数の 関数として示しています。 このように、WFOVとNFOVのサジタルMTFは、焦点面全体の回折限界に近く、接線成分は低くなっています(特にWFOVで)。
SupIR® 45-900mm f/4
SupIR® 45-900mm f/4 は、15-300mm f/4レンズと3倍率の光学望遠レンズを組み合わせたレンズです。これらを合わせて、EFLが長く(900mm)、ズーム比が20倍であり、ズーム全域でF# 4が固定されているズームレンズを形成しています。
図5は、NFOVとWFOVにおける本レンズのMTFチャートを示しています。このレンズでは、サジタルMTF成分と接線MTF成分が、WFOV、NFOVの両方で回折限界に近く、焦点面の隅に向かって若干の劣化が見られます。
SupIR® 50-1350mm f/5.5
本製品群の3本目のレンズは、望遠レンズを搭載した28-850mmレンズをベースにしている SupIR 50-1350mm f/5.5 ズームレンズです。28-850mmズームレンズと同様に、SXGA 1280×1024、15μ FPAフォーマットに対応し、回折限界に近い性能を実現しています。現在、当社のポートフォリオの中で最も焦点距離の長いレンズである本製品は、検出範囲が26km以上で、航空および監視用途向けの長距離サーマルイメージングオプティクスの最も厳しい要求に適合します。
図6は、NFOVとWFOVの両方で50-1350mm f/5.5レンズのMTFグラフを示しています。このレンズのMTF性能は、構成部品である28-850mmズームレンズの性能に準じます。従って、WFOVとNFOVの両方でのサジタルMTFは焦点面全体の回折限界に近く、接線成分は低くなります。
これらのレンズのDRI 性能値は図7に記載されており、SupIR 50-1350mm f/5.5によって26km以上という目を見張る検出範囲が達成されます。米国陸軍ナイトビジョン研究所のFLIR92モデルを使用し、大気減衰係数を0.2 km-1と仮定してDRIの範囲を計算しました。 図4~6に示すように、長いEFL値と高いNFOV MTF値により、長いDRI値が得られます。
まとめ 構成や部品の光学的、機械的、ズーム設計は、小画素センサーや長距離検出光学システムの高性能を確保するための鍵となります。
UAVやドローンのような制約のあるプラットフォームでは、ズーム全域で高い光学性能を発揮する軽量設計が必須です。
過酷な環境下での高解像度撮影のためには、焦点距離が最も長く、ズーム比が高いレンズを製造する必要があります。耐久性コーティングにより、性能を維持し、製品寿命を延ばすことができます。
Ophirは、最新の設計と生産能力の比類のない組み合わせにより、高画質、高解像度、連続ズーム、過酷な環境条件での長距離検出を要求するセキュリティおよび監視市場における次世代の長距離サーマルイメージング撮影用途のニーズに応えます。
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参考文献
- Maxtech International Inc.: "The world market for commercial and dual use infrared imaging and infrared thermometry equipment", 「業務用および軍民両用赤外線イメージングおよび赤外線温度測定装置の世界市場」2020年